トリガーポイントとは
トリガーポイントは体表上の圧痛を伴う筋肉のしこり(硬結)です。
肩こり、腰痛や膝痛などの原因となります。
筋肉は全身に600以上もありますが、疲労や血行不良などがつづくとロープ状に強く緊張して硬いこわばりができます。
これを「索状硬結(さくじょうこうけつ)」といいます。この「索状硬結」の中に、とくに硬く、痛みを発するしこり状のポイントができます。これが 『トリガーポイント』 です。
「トリガー」というのは文字通り「引き金」という意味で、ピストルの引き金を引くと、弾が遠くまで飛ぶように、トリガーポイントを押すと痛みをそこから離れた部位で感じる事から名付けられています。
これは神経の走行とは関係のない所で痛みを感じるため、「神経痛」ではなく「関連痛」と呼ばれています。
トリガーポイントが起こすこの「関連痛」が、医療機関をはじめ、痛み医療に関わる方に知られていないため、痛む場所への治療に終始することとなり、長年痛みで苦しまれている方が多いことの背景となっています。
『トリガーポイント』が原因の痛み症状を『筋筋膜性疼痛症候群(きんきんまくせいとうつうしょうこうぐん) myofascial pain syndrome:MPS』といいます。
筋筋膜性疼痛症候群は、痛みだけでなく、しびれや筋力低下、筋の伸縮機能不全、浮腫、自律神経症状、抑うつ症状、異常姿勢など様々な悪影響を体に及ぼします。
腰や脚の痛みの原因となるトリガーポイント
腰や脚の痛みの原因となるトリガーポイントはたくさんあります。
以下の図の中に、あなたの痛みに似ているものはあるでしょうか?
腰~殿部の痛みの原因となるトリガーポイントの例
←左右にスライド→
図のバツ印がトリガーポイントのできやすい部位(好発部位)で、そこから赤い範囲に痛みやしびれなどの症状がおこります。
これらの図に当てはまるような痛みやシビレの症状があれば、あなたの症状も“トリガーポイント”が原因の可能性が高いと考えられます。
殿部~脚の痛みの原因となるトリガーポイント
←左右にスライド→
図のバツ印がトリガーポイントのできやすい部位(好発部位)で、そこから赤い範囲に痛みやしびれなどの症状がおこります。
このように、これらのトリガーポイントで坐骨神経痛と同じ範囲に痛みがおこります。
実際には坐骨神経とは関係のない筋筋膜性の痛みなのです。
そして“トリガーポイント”により生じている筋筋膜性の痛みは、筋肉の緊張をゆるめることで改善します。
背骨の手術をするまでもなく、痛みを改善することができるのです。
トリガーポイントの治療法
腰痛トレーニング研究所では、手技施術によるトリガーポイント治療をおこないます。
手技・ストレッチ・鍼治療などの施術により、筋肉をゆるめ、血行を改善してトリガーポイントによる痛みを改善します。
痛みの原因になっている筋肉だけではなく、その周囲や全身に対して施術をする場合もあります。患部や全身の筋肉がほぐれ、血流が良くなると、痛みやシビレなどの症状が改善します。
このような施術などで痛みを一時的でも減らすことは、痛みの回復につながることが疼痛理論上わかっています。一時的に痛みをやわらげるだけでも、痛みの回復力が強まるのです。
手技による治療
トリガーポイントを改善するには、虚血圧迫という手技や鍼治療がもっとも効果があります。これらの手技治療は『トリガーポイントブロック』という麻酔注射による治療よりも効果があるというデータがあります。
腰痛患者63名を4群に割り付けてトリガーポイント注射の有効性を調べたRCT(ランダム化比較試験)によると、疼痛改善率は鍼治療群や冷却スプレー+虚血圧迫群より、トリガーポイント注射(局所麻酔剤・局所麻酔剤+ステロイド)群の方が低いことが判明。
http://1.usa.gov/nTBSuI
通常は手技による施術をおこないますが、患者さんのご希望がある場合など必要に応じて鍼治療もおこないます。
ストレッチ ~筋肉・関節の柔軟性を高める~
トリガーポイントが生じた筋肉は固くこわばっています。そのような筋肉を回復するのに有効なのがストレッチ。
ストレッチは縮んだ筋肉を伸ばしてゆるませ、伸縮機能や筋力を回復します。血行も改善しますので痛みがやわらぎます。
痛みのある部位をかばってしまうために、他の部分の柔軟性や筋力が低下したり、姿勢が悪くなってしまったりすることがありますが、それを予防、改善するのにもストレッチはとても有効です。
例えば骨盤周囲筋の柔軟性の低下により腰椎や骨盤、また首や肩の動きに悪影響を及ぼすこともあるため、下肢のストレッチもおこないます。
このような方法で痛みやシビレの原因になっているトリガーポイントをゆるめると症状が改善します。
ゆ着した筋膜をはがす ~筋膜リリース~
筋膜とは筋肉を包んでいる膜で、身体全体にはりめぐらされています。
筋膜は身体の形を整えたり、身体の動きに合わせて形を戻したりしています。そのため第二の骨格とも呼ばれています。
かたよった姿勢や動作をとり続けたり、同じ姿勢を長時間とり続けたり、怪我などによって身体の一部に負担がかかったりすると、筋膜が自由に動けない状態になります。
すると筋膜のよじれが生じて筋膜と皮膚・筋肉との間の滑らかな滑りが失われてしまいます。
これを筋膜のゆ着といいます。
筋膜は全身につながっているので、ほかの筋肉や筋繊維にまで動きの悪さが波及し、痛みや筋力の低下、柔軟性の低下、運動パフォーマンスの低下、日常生活活動の低下がみられるようになります。
それによってトリガーポイントができる原因になることもあるのです。
筋膜リリースとは、筋膜の縮み、ねじれ、変形、ゆ着を回復する手技療法です。
ゆ着した組織をリリースすると、痛みやシビレなどの症状が良くなっていきます。
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トリガーポイントの創設者
JanetG. Travell,M.D. (1901-1997)
筋膜痛の存在と重要性を認識していた医師の中でもその診断と治療におけるパイオニア的な存在であり、この分野を開拓した女医である。
DavidG. Smons,M.D. (1922~)
もともと航空宇宙医師として、無重力状態のストレスに対する生理学的反応を測定する方法の研究者で、一見接点がない2人の相乗効果によって生まれた、痛みを緩和するために最も効果的な手法がトリガーポイント療法である。
Janet. Travellが初めて「トリガーポイント」という言葉を用いたのは、1942年のことである。(1999, 15)
参考文献
[誰でもできるトリガーポイントの探し方・治し方 (Clair Davies / Amber Davies 著 大谷素明監訳) ]
『トリガーポイント』 ができる原因
なぜトリガーポイントが出来るかは、はっきり分かっているわけではありませんが、次のような原因で起こるのではないかと考えられています。
まず筋肉を過度に収縮や伸張させることや、外傷などによってできる微小な損傷が元になります。
そこから筋拘縮(筋肉のコリ・こわばり)が生まれ、その部分の血行が悪くなり、老廃物が蓄積すると発痛物質という痛みの原因物質が出てきます。
そうするとますます筋肉がこわばり・・・、という悪循環におちいり、トリガーポイントが形成されます。
同じような動作を繰り返すことやずっと同じ姿勢を維持するなどでも、特定の筋肉を収縮させることとなり、筋肉が虚血(血液が足りない)状態となりトリガーポイントが形成されます。
他にケガや手術、精神的なストレスや葛藤などが原因となることもあります。
トリガーポイントの痛みのメカニズム
筋肉が緊張すると、筋肉やその筋肉を包んでいる筋膜に負担がかかり、それだけで痛みを感じる神経を刺激してしまいます。
また筋肉が緊張すると、筋肉の中の血管を圧迫してしまい、血行が悪くなって酸素不足になります。さらに乳酸などの疲労物質や、ブラジキニン、プロスタグランジンといった発痛物質(痛みの原因となる物質)が増えます。
このようなプロセスで痛みが発生するのです。
そしてこのような状態がしばらく続くと、痛みによりさらに筋肉が緊張し、また不安やストレスなども加わってさらに痛みが悪化する【痛みの悪循環】という状態に陥ります。
MPSの痛みはとても強い痛みで、しびれや重だるさなどをともないます。いわゆる神経痛と診断される症状も、このMPSが原因である場合があります。